止まっていた季節が動き出したのか、秋らしい爽やかな朝になりました。そのせいでしょうか、本日の研修会は会員30名と実習生3名に一般参加の方が5名加わり38人です。赤對さんが挨拶をされ、今日の講師の海老原さんと岡さん、実習生と一般の方を紹介の後出発しました。(12時30分に森のカフェ前で解散)
シナノキは、蜜源植物なので花から蜂蜜が採れ、樹皮の繊維が強く主にロープの材料に利用されているそうです。よく似たボダイジュとの葉の見分け方を教えてもらいました。ボダイジュは葉の裏全体に毛があってやや白く見える、シナノキは葉の裏の葉脈の分岐点に毛の塊があることで見分けられるというので、ルーペを取り出してしっかり観察しました。不思議な形の2~3個の実をぶら下げた総苞を高く投げ上げて、くるくる回って降りて行くのをワイワイ言いながら見ました。飛ぶための仕掛けはヘリコプターの翼ですね。
途中でジョロウグモのメスと複雑な網が張っているのを見つけられました。この網には体長1ミリほどのシロカネイソウロウグモが居候して、食べ残しなどを失敬して生活しているという事や、三重構造になっていてゴミ捨て場もあるという話面白い話に、「クモは嫌い」と言っていた方がとても興味を持たれたようでした。
新エリアの蝶の幼虫が食べる食草を植えた「食草園」では、カラスザンショウにナミアゲハの幼虫がいました。チョウは種類によって食べる食草は異なり、それぞれの幼虫が特定の植物のみを餌として利用するそうで、ナミアゲハはミカン科の植物、ジャコウアゲハはウマノスズクサ類のみを食草とし、その毒を体にため込んで、成虫になっても体の中に毒が残って鳥などが襲わなくなるという戦略だそうです。アサギマダラとの関係を認識するためにキジョランの鉢植えが展示してありました。岡さんはマーキング調査などにも参加されているそうで、羽に書く標識の話もしてくださいました。
秋はコスモスの季節。虫を呼ぶための舌状花と真ん中の筒状花にある雄蕊と雌蕊を観察。花弁が星形に開いた先の葯室から花粉を分泌中のものや、雌蕊の柱頭が左右に大きくカールして頭を出しているのを見分けました。こうして中を覗いてみると、とても美しいことに感動です。
先週まできれいに咲いていたバクチノキ、フジバカマの花が終わりかけて香りだけ嗅ぎましたが、一緒に咲いていたアキニレが早くも実をつけていたのに驚きました。持って来て下さったハルニレの葉と分布の違いを聞きました。この実はアトリ、カワラヒワ、イカルなどの鳥が食べるそうですが、真ん中の種子が重心になり風で飛んで行くそうです。
オニグルミの硬い殻を割って食べるのはリスやネズミ。リスは縫合線に沿って開けて中身を食べるので食痕でどちらが食べたかわかるそうです。
カラコギカエデの翼果が枝にたくさんついています。この仲間は2個のセットで、いかにもそのままで飛んで行きそうですが、とぶ直前にはタネの間に隙間が出来て1個ずつになって飛んで行くと言う事です。
カンコノキもカボチャのような実をつけています。ハナホソガとの絶対共生は、どちらかが絶滅するとどちらも終わってしまうという話は何度聞いても面白い。9月頃に必ず来るオオキンカメムシの話もありました。
ワレモコウは穂の先端から咲き始める「有限花序」の咲き方、お昼から咲く毛むくじゃらのタヌキマメ。鳥に食べてくださいとアピールする赤い実のガマズミ、水に浮いて広がるハマナツメ。サングラスのような面白い形をしてヌスビトハギよりも大きな実のフジカンゾウ。仕組みは引っ付く付着散布ですね。
「サクラの花が咲いている!」との声で、一斉に皆の視線を集めたのはキンキマメザクラ。3月に咲くはずなのに葉っぱが落ちて、狂い咲きしてしまったようです。その前にあるホトトギスの花。葉を裏返して探してみたら、茎に逆さまにぶら下がっている羽化したばかりのルリタテハがじっと羽を乾かしているのを誰かが見つけてくれました。タイミングが良かったのかもしれませんが、命のドラマに付き合うことができた、そんな嬉しさがこみあげてきました。
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今回は岡さんの案内で果実の散布の仕方に様々な工夫が見られましたが、植物と鳥や昆虫との関りなども説明されたので、より植物の奥深さを感じました。紅葉は時期がずれましたが、お天気も良くて多くの果実が見られ、講座生の方からも「新しい知識を得た」、「「観察が楽しかった」と好評でした。(文/大)


