8月1日(火)午後2時から、「ひと・まち交流館」で、元東京芸術大学講師、雅楽協議会代表の鈴木治夫先生による公開講座が行われました。京都の最高気温が38.2℃を記録した当日、先生は、朝8時からの鵜殿ヨシ原での炎天下での「つる草抜き」作業を行ってからのご講演でした。参加者は会員39名に一般参加者15名の計54名で、会員参加者の内8名が「京とおうみ」行事の今年度の初参加者であったのも特記事項です。
冒頭、雅楽師の装束として、平安時代以来続く、海藻に由来する海松(みる)色の直垂に烏帽子姿でご登壇され、参加者の目を引きました。先生の直垂は光の当たり具合で深い黄緑色にも見える印象深い装束です。私達が知る和服とは幅が異なり、織機も違い高価なものになるそうです。(なお、糸を紡ぐ蚕から異なるとのお話は、琵琶や箏などの絃と普通の絹との違いを混同して誤ったお話をしてしまったとのお詫びと訂正がありました)
今回の公開講座のテーマは、「雅楽」をメインに、雅楽と関係の深い鵜殿のヨシ原の「つる草抜き」についてもです。これは、シニア自然大学校で、「ヨシ刈り」の実習を行った鵜殿で、雅楽器の篳篥(ひちりき)の蘆舌(ろぜつ、リード)に使うヨシが、つる草の繁茂によって絶滅寸前との報で、その再生に雅楽協議会が取り組まれている事からです。5月幹事会で、つる草抜きと鵜殿のヨシについてのお話と、11月の雅楽師東儀秀樹氏による大学校創設30周年記念講演会を控え、雅楽自体についてもっと知ってみたいとの要望が出されました。なお、この「つる草抜き」活動については、3月28日付け、朝日新聞紙上発表の「SDGs岩佐賞」の芸術部門で、鈴木先生の活動が評価され、賞金200万円を受賞されましたが、この活動に全額を寄付されています。講演は、4ページのレジュメと、雅楽協議会の季刊誌「雅楽だより」のつる草抜きの現況をまとめたNo.73号と、今回の講演を意識して書かれた、雅楽の歴史や篳篥についてまとめたNo.74号が配布され、写真類はスクリーンに示されました。 次にヨシが大切なリード(英語でヨシの事です)となる篳篥は、地上で生活する人の声を表すとされ、これもヨシで出来たリードの部分を、温かい渋みのあるお茶に浸して吹き易くするなど繊細です。また、横笛型の龍笛(りゅうてき)は空を表すもので龍の鳴き声とされており、この3種で雅楽のメロディーとハーモニーを奏でます。久しぶりの演奏とは言え、先生が篳篥で「仰げば尊し」、笙で「浜辺の歌」を演奏されてくつろいだひと時でした。また、口伝を実演された80歳近い先生の意外な美声も驚きでした。
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この他、NHKの朝ドラのモデル、牧野富太郎博士の2度にわたる鵜殿のヨシ調査のお話や、雅楽が、日常の私たちが使う「打合せ」「千秋楽」「やたら」「二の舞」「番組」などの言葉の源であるとの事に感心しました。 終了後も楽器実物を見たりした参加者からは、内容のある講演であった、楽しめた、音色に癒された、面白かった等の感想が寄せられました。一般参加の高槻市立自然博物館の方からは、市民講座で同様の講演会を企画したいとの申し入れが鈴木先生にあり、秋から冬にかけての講演を快諾されたとのことでした。
(文/事務局:赤對)
(文/事務局:赤對)