★雨天決行以外の屋外行事について、前日17時発表の気象庁の天気予報で、
該当地域の行事当日の午前中の降水確率が60%以上の場合、中止です。
詳しくは当クラブの概要紹介を参照願います。
2024年08月
京都市の予想最高気温が38℃という猛暑の8月13日(火)午後2時から「ひと・まち交流館」で公開講座が行われました。講師は高槻市立自然博物館総括学芸員の高田みちよ先生。演題は「博物館と標本について:何のために?」。参加者は一般参加6名を含めて計37名でした。
冒頭、高槻市立自然博物館(あくあぴあ芥川)の紹介のあと、高槻市鵜殿での特定外来生物ナガエツルノゲイトウの駆除作業を報告されました。駆除には当クラブの有志も参加しています。繁殖力が旺盛で、繁茂すると排水機場のスクリーンに引っかかって目詰まりを起こすなどの被害が出て、兵庫県では1トン300万円で処分との事です。取り残した破片が再び成長して来るのがやっかいですが、駆除後、シートで覆っておくのが有効とのことでした。来年度中の駆除を目指しているとのことです。
博物館の種類には東京国立博物館のような総合的なもののほか、科学、歴史、美術、動物園、植物園、水族館、天文台などがあります。博物館の仕事は①資料の収集と保管、②調査や研究、③教育と普及(展示)です。自然史博物館は「科学」に属します。英語の「History」の意味は「歴史」の他に「自然を記録して残すこと」で、「自然誌」が本来の意味であったそうです。具体的には①自然史標本の収集・保管、②生き物の分類、③知り得た知識の公表(教育・普及)、④生物多様性への寄与です。自然史標本の特徴は、人が作ったものではないこと、そして「今」「ある、いる」ものを残すことです。スウェーデンのリンネは生き物をグループに分け、名前に属名と種名をつける二名法を確立しました。また、リンネはこれにより、「神の意思」を知ろうと考えたそうです。現在は、国際命名法規約のもとに世界共通で整理ができ、データベース化されて非常に便利になったとのこと。標本の種類には乾燥標本(剥製、押し葉、石ころ、骨格、昆虫、剥製など)や液浸標本などがあります。保存方法は食品と同じで、腐らせない、カビを生えさせない、虫に食われないことです。植物標本は、新聞紙にはさみ、布団乾燥機などで乾燥させるというやり方を現在も続けているとのことです。
以下は標本の利用例です。標本に名前を付けるには基準となる「タイプ(模式)標本」が必要です。タイプ標本がないのは個性がバラバラの人間だけ。ヤマトグサは日本人(牧野富太郎)が初めて命名したタイプ標本です。標本からはその生き物が生きていた時と場所が分かり、自然環境が失われる前の標本があれば再生は可能です。
また、過去の標本があれば分類の見直し(カワムツの細分化の例)が可能で、外来種と在来種の増減の状況(オンブバッタの例)や生き物体内のマイクロプラスチックや農薬の分析をすれば環境の変化が分かります。私が興味を持ったのは、多くの渡り鳥の標本を解剖すると、渡りの途中で器官(胃腸、筋肉)のサイズを変えるという事例です。これは、各地での標本の比較から分かった事です。また、あくあぴあ芥川では魚類標本から芥川に生息する魚類相がまとまったとのことです。
標本で重要なのは、いつ、だれが、どこで採集したのかといった採集情報です。これがないと単なるモノです。自然史標本は①過去、現在、未来を繋ぐタイムカプセル、②その生き物の情報が後になっても得られる、③その生き物のいた時間、場所の環境が分かる、④生物多様性を維持するための研究に必要です。
次は日本の博物館事情について。博物館の父は東京博物館や上野動物園の設立に尽力した田中芳男氏。育ての親は初代東京博物館長で博物館事業の発展と普及に尽力した棚橋源太郎氏。全国には博物館が約5400館ありますが、うち4000館は学芸員が1~3人と小規模。そこで小規模ミュージアムネットワークを2010年に発足させて小規模な博物館同士が連携する仕組みを作りました。高田先生は、小規模博物館の連携で、博物館全体の底上げに貢献したことで2023年度文化庁長官賞を受賞されました。最後に先生より、博物館資料は人類の財産だが、日本の博物館は予算、人材、収蔵スペースのすべてにおいて不足している。展示を見に行くだけではなくもっと利用して欲しい。国民が「博物館は大事」と思うことが予算増につながる、と締めくくられました。
(写真はクリックで大きく表示されます)
本日の講演で、博物館の歴史、標本の重要性とその利用法、さらに日本の博物館(特に小規模)が抱える問題点を知ることができました。高田先生ありがとうございました。なお、質問でのヨーロッパの蝉については、英国には1種のみ、ドイツには居ないとの事。以下ご参考までに、世界の蝉は約1600種、日本には約30種、台湾には約50種以上。ヨーロッパでも暖かい、ギリシャからスペインにかけての地中海沿岸には数種類、アメリカには周期ゼミという土の中で過ごす期間が13年と17年の2種類が居て、この時期には大発生するそうです。また報告書作成に当たり木谷博史さんのレポ-トを参考にさせていただきました。(文/讃良) 今年一番の暑さの週になるという時期の開催になりました。参加者29名、うち実習生6名。講師は大川内さんと高橋さん。私は大川内さんのグループに参加しました。暑い時なのでいつもより30分早い12時に終了しましょうとの提案で、移動はやや急ぎ足になりました。
次は四季彩の丘のパーゴラへ。つる植物で日差しは避けられています。そこでハスの説明を聞きます。「ハスの生長」と「ハスの花の4日間」。そして當麻寺の蓮糸で織られた曼荼羅華の話も聞いて実際のハスを見に行きます。雌しべの先が黄から黒に変わっていく様子などを確かめます。パーゴラに戻ります。カラスウリの花に似たヘビウリの白いレース状の小さな花、長い緑白色の実は本当に蛇がぶら下がっているようです。そこから出ると外にはアオバナ(正式名オオボウシバナ)。友禅染の下書きに使う青花汁を作るための作物です。隣にはハブソウとエビスグサ。黄色い花が目につきます。どちらも種子を炒ったものがお茶になります。
なからぎの森を抜け、青もみじに囲まれた池のまわりを通り生態園へ。ウワバミソウ(イラクサ科)。ミズと呼ばれる山菜でふきに似た食感で美味しいそうです。カラムシ(イラクサ科)。縄文時代、これから繊維を採って着るものを作っていたそうで、実際に取り出した繊維を見せてもらいました。少しごわっとしています。次はオニグルミ。源氏物語の13帖で光源氏が明石の君に手紙を出しますが、この紙はオニグルミで染められていたとの話。植物から色々な分野に話は広がります。フシグロセンノウ、ヤマガシュウ他。
次はユリの話。この観察会に参加された方は次の三つの話は覚えて帰りましょうと大川内さんが教えて下さったのは
① 明治時代、日本の貿易輸出品の1位は生糸、2位がお茶、3位はユリの球根。
② シーボルトによってヨーロッパに紹介された日本のユリは人気が高く、ヤマユリなどから多くのユリが交配された。
③ ムカゴができるのはオニユリだけ。
(写真はクリックで大きく表示されます)
カリガネソウを見て、集合場所のノニレの大木の元へ急ぎました。実物の花を見るだけでなく講師の方の話を聞くことで、他の季節の様子やその植物と共にある文化を知ることができました。暑さに負けず参加された皆さんと一緒に楽しい時間を過ごしました。 (文/海老原)
最新記事
カテゴリー
アーカイブ
読者登録