京とおうみ自然文化クラブ

「京(みやこ)とおうみ自然文化クラブ」は、認定NPO法人シニア自然大学校の京都府・滋賀県の地方組織です。旧ブログは左下リンク集より閲覧できます。

2023年06月

研修会 6月12日(月)「季節の植物観察」の報告

 梅雨真っ只中、雨が心配でしたが、終了まで、ずっと曇り空で過ごしやすかったです。会員15名、実習生2名の合計17名、天候の関係なのかいつもより少なめの出席で、齊藤さん、澤田(章)さん案内の2班に分かれてのスタートでした。以下は澤田さんの班の報告です。実習生の方が2名おられたので、その方々を中心に研修しました。

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〈ワイルドガーデン及びその周辺〉
トケイソウ
 今日は、まだツボミが多く、咲きかけている花が一つ、しばらく見ていると徐々に花が開いてきました。一日花で、花弁とガクで10枚、おしべ・めしべが時計の秒針のようです。(昼過ぎには、たくさんの花が開いていました。)
キキョウ
 きれいな青紫色、秋の七草の一つです。自家受粉をさけるための一つの工夫としての雄性先熟の花です。おしべが先に成熟し、めしべが成熟するころには、おしべの花粉がありません。
シナノキ
 淡黄色の小花をいっぱいつけています。かすかに甘い香りがするような。後で観察するヘラノキ、ボダイジュと同じアオイ科の植物です。違いを観察しました。葉脈の分岐部に褐色の毛があります。(澤田さん直筆の「シナノキの四季の絵」で説明がありました。)
クマノミズキ
 白い小さな花が満開です。ミズキ科で、ミズキとよく似ているが花の咲く時期がミズキの後です。小さな花は、花弁が4枚で、多くの蜜があり、昆虫がたくさん集まってきています。
シナアブラギリ
 葉の基部の蜜腺を観察しました。卵型の蜜腺葉。柄にピッタリとついていました。花も葉もそっくりなアブラギリの蜜腺は柄があり、見分けることができます。

 葉が柏餅の柏の葉に似ているカシワバアジサイ、遠くからでも白いフワフワした花が目立つメラレウカ アルテルニフォリア(長い名前です。)も観察しました。

〈タケ・ササエリア〉
キヌガサダケ
 カサの内側から伸びた部分は、まるでレースのスカートをみたいです。主に竹林に発生することが多く、すごくきれいなキノコで「キノコの女王」とも呼ばれます。しかし、かなり臭いにおいがします。この匂いでハエを呼び寄せて、ハエに胞子を運んでもらいます。朝に出現して、昼には萎んでしまいます。見ることができて、よかったです。
スエコザサ
 5月の研修会でも観察しました今話題の牧野富太郎の奥様の名前に因んだスエコザサです。(特徴等については5月のブログに説明がありますので省きます。)奥様の名前をササにつけたのは、「地味、もっときれいな花に名前をつけてあげたらよかったのに~」との声もありました。
カラスビシャク
 乾燥させた根茎は半夏という名前で知られ、生薬に用いられます。根元にムカゴがついていました。

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 〈アジサイの展示〉
 いろいろな鉢植えのアジサイが展示されていました。約2,000種類ものアジサイがあるそうです。ガクアジサイが原種です。江戸時代、アジサイは、ガクが4枚(死に通じる)。色が変わる(心変わり)。花が枯れても残る(幽霊みたい)と武士道精神からはずれるという理由で嫌われていたそうです。
フジキ
 背が高い木なので、見上げると、小さな白い花がいっぱい咲いていました。花びらが下にいっぱい落ちていました。だいたい5年に1回ぐらいしか花を咲かせないといわれていますが、植物園では、なぜか昨年も咲いていたそうです。しかし、花が咲くのは珍しいそうです。マメ科で、花は蝶型、葉は奇数羽状複葉の説明がありました。
 木に巻き付いているイワガラミ(アジサイ科)、ネコノチチ(葉を枝の左右交互に2枚ずつ付けるコクサギ型葉序)等も観察しました。

〈生態園及びその周辺〉
ヘラノキボダイジュ
 最初に観察したシナノキと同じアオイ科の仲間、花、葉等の違いを確認しました。
ノグルミ
 高木なので、普段見ることができないのですが、低い位置で、雄花序と雌花序が観察できました。風媒花なので花弁はありません。
ホソバイヌビワ
 イチジュクの仲間で、イヌビワより葉が細い品種です。花は、花嚢の中に咲き、花が終わって熟すと実になります。花嚢の中には、イヌビワコバチがいます。イヌビワにとって、イヌビワコバチは受粉に絶対必要な存在です。逆にイヌビワコバチにとってもイヌビワがないと絶滅してしまう存在です(共生関係)。イヌビワコバチのメスは、イヌビワの花嚢の中に卵を産み付け、子供はこの中で育ち、成長したオスはメスと交尾を果たすと外に出ることもなく、この中で死んでしまいます。だから、オスには、はじめから羽根がありません。メスは交尾のあと、外へと飛び立っていき、またイヌビワの花嚢の中に卵を産み付けます(外に1回も出ることができないオスが可哀想ですね。)
 見上げるときれいな緑色の掌状複葉のトチノキ、開いていない葉がきれいに折りたたまれているのが透けて見えるユリノキ等を観察し、イチョウの実生及び植物の進化についての説明を聞き、バラ園の方に向かいました。

〈バラ園〉
ヒマラヤスギ
 バラ園中央には、りっぱなヒマラヤスギがそびえ立っています。大正6年(1917年)からあり、樹齢100年以上、植物園は、来年100年になるので、整地のころからあったみたいです。スギというが、マツ科の常緑高木の針葉樹です。澤田さん作成のヒマラヤスギの松ボックリの絵および解体したもので(凄い)、説明していただきました。
 そろそろ、集合時間に近づいてきましたので、その場所に向かう途中、芝生の広場のトイレ付近のムクロジの花を観察しました。

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 (写真はクリックで大きく表示されます)

 実習生2名の方から「いろいろ植物を観察でき、大変勉強になった。今日のことは、今後の講座に活用していきたい。」との感想を述べられました。

 これからもこの研修会を多くの実習生に受けてもらい、いろいろな植物に興味を持ってもらえたらいいなあ。と思いました。今月担当していただいた齊藤さん、澤田さんありがとうございました。   (文/A.N.)

例会 6月8日(木)「宇治市植物公園観察会」の報告

 曇り空で午後から雨が心配されたが、10時半過ぎから当公園技術員の案内で観察会を開始。参加者は20名(うち2名は一般参加)。

 緑の館を出てすぐの所にアーモンドの小株があるが、宇治市とスリランカのスワラエリア市の友好都市の記念樹である。少し歩くと噴水のある高台に着く。ここからひな壇状の下方正面に花と水のタペストリーが現れる。タペストリーは本公園を代表する施設でデザインは年2回入れ替えている。現在のカエルは5月末にウサギから変更したばかり。

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 少し下った所で小さなピンクの花がかわいいシモツケに出会う。和名は栃木県(下野国)で発見されたことに由来し、京都府では絶滅危惧種とのこと。坂を下ると樹齢70年のシダレザクラがあり、その脇に平野甚之丞氏によって開発された京都府茶の奨励品種“こまかげ”の原木が植えられている。

 ここからハーブ・有用植物園に入る。ハーブの多くは根が広がらないように鉢植えされている。ローズマリーが多く、匍匐性と自立性の2種があることを知った。実がたわわに付いたカリンや、ザクロの花のオレンジ色が印象的であった。ラベンダーも多いが、デンタータ系は匂いが強く高温多湿に強いとのこと。また植栽されているブルーベリーのラビットアイ系は実は小さいが夏の暑さに強いので関西向きとのこと。ナツボダイジュの花が満開だが、すぐ下のフユボダイジュには早くも実が付いており、品種の違いを実感した。通路脇のヤマグワには熟した実が鈴なりで、その近くにはクチナシの白い花が目立つ。甘味料として使われているステビアの葉を揉んで舐めるとほのかな甘みを感じた。ネギ坊主のように茎の先端に付いた丸い淡紫色のニンニクの集合花は愛嬌がある。

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 春のゾーンに入ると、葉が暗赤色のベニスモモに約2センチ大の紅色の実がなっていた。どんな味がするのかな。すぐ近くの「オモイノママ」というウメは花を楽しむための品種。その傍らに置かれたFRP製の恐竜はボディーガードのようで面白い。5月に花が咲くハンカチノキは葉から独特の臭いを発するらしい。試したがよくわからなかった。第二次大戦後に植えられた多くのソメイヨシノは寿命が近づいているため、代替品種としてジンダイアケボノに切り替えが始まっているとのこと。ルピナスは、今年は花が少なく寒さが足りなかったのが原因のようである。
 さらに歩くとタペストリーの前に到着。幅62m、46段のひな壇に約3600基のプランターを並べて植物でレリーフを作っている。カエルの各部の色は花の種類を変え、たとえば黄色はコリウス、白と赤はベコニアを使用。プランターの入れ替え作業は市民ボランティアの手を借りているが、数が多いだけに大変な作業であろう。
 当公園は1996年に開園したが、針葉樹も植えた。なかでもセンペルセコイアは根張りが浅いので倒れやすいのが欠点。樹高が伸びたので切り倒すのも大変とのこと。
 アジサイゾーンには牧野富太郎が名付けたヒメアジサイの花が満開。ちなみに「ヒメ」とは小型ではなくその優雅な姿から。また、今年はマダケの花が咲いたとのことで、花の痕跡を確認することができた。温室の横ではタイサンボクの白い花、隣接するアメリカデイゴの樹上には赤い花が咲いていた。案内は12時過ぎに終了。

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(写真はクリックで大きく表示されます)
  昼食後、13時からはご厚意で別の技術員が温室を30分ほど案内していただいた。自由参加だが19名が参加。入口近くにショクダイオオコンニャクの株があり、天井近くまでスラリと伸びた葉の巨大さには驚くばかり。バナナに似たタビビトノキはマダガスカル原産だが名前の由来は不明。食虫植物として知られるウツボカズラの袋は葉の一部で甘い蜜を舐めに来た虫がすべすべした袋の縁から中に落ちる仕組み。カカオの木は自家受粉で黄色い実をたくさん付けていた。そのほか、花の形状がユニークなブラックキャットウナズキヒメフヨウが印象的であった。

 当公園での観察会は今回が初めてだが、斜面を利用して植栽されているため広さはコンパクトながらよく手入れされていると感じた。また管理上の苦労話も聞くことができた。13時半頃に解散となったが、最後まで雨に降られなかったのは幸運であった。この行事を企画していただいた中林さんと澤田章夫さんに感謝いたします。   (文/讃良)

例会(歴史と文化)6月1日(木)「飛鳥の宮跡を巡る」の報告

 昨日から心配しておりました天候でしたが、降水確率が午前は10%で行事は実施となりました。近鉄橿原神宮前駅に10時15分に集合。なんと快晴でびっくり結局解散までの間、雨が降らず、かつ気温もほどほどで最適の活動日和となりました、これも参加いただいた皆さんの日頃の行いの結果かと思っております。
 今日の参加者は22名、案内はいつもお世話になっております山下さんにお願いいたしました。橿原神宮駅からバスで飛鳥まで、「森と海の自然科」の皆さんも一緒のバスになり超満員となりましたが久しぶりの方ともお会いでき話もはずみ、良い時を過ごしました。

 バス停・飛鳥で降り「夢の楽市」で本日の行動予定を説明いただく。まず「飛鳥と明日香」の違いはとの問いがあり「飛鳥」は万葉集の中、地名の褒め言葉で「飛鳥明日香(とぶとりのあすか)」すなわち飛ぶ鳥がたくさんいることは食べ物が多くある豊かな土地。いつしか「あすか」という地名が「明日香」の文字から「飛鳥」に変わっていき定着したと教えていただいた。そして本日は「斉明(さいめい)天皇」の「石と水を使った宮跡」を巡りますとお話をされ、この飛鳥の地に約100年にわたり都があったのは蘇我氏の影響があったのではないかとのことでした。
 まずは「石神遺跡」に斉明天皇や天武天皇など複数の時代の遺構があり迎賓館もあったようで東アジア一番の文明国を目指していた。隣の「水落遺跡」には元は小学校があり統合により廃校となり、その跡地を調査したところこの場所に中大兄皇子(後の天智天皇)が造ったとされる水時計跡が発掘された。4段の箱と最下段の水槽には目盛りがあり、目盛りを読むことにより時を計り、鐘を鳴らし都に時を告げた。これにより時間の共有ができ天皇は時間を支配することができた。

飛鳥1
 少し移動して「飛鳥坐(あすかにいます)神社」に毎年2月の第一日曜に行われる「おんだ祭」は西日本三大奇祭の一つで子孫繁栄を願う祭、ぜひ来年に来ようと思う。「飛鳥東垣内遺跡」は理想郷の丘を作るため天理からこの地まで運河を造り、その遺構が発掘された所。その運河を造るため約3万人が動員されたとのこと。「飛鳥寺」へ向かう家並みは風情がありレトロで素晴らしい。礎石を見る、日本では飛鳥寺で最初に用いられたとのこと。飛鳥大仏の顔と指の一部は造形当初のものでまた石の台座にくっついているので飛鳥時代から場所が変わっていない。
 ここから少し歩き「明日香民俗資料館」で昼食をとる。午後からはこのすぐ近くにある「亀形石造物」「酒船石」見学。「亀形石造物」は亀の姿の石造物で水を流して占いに、また祭祀が行われたのか?酒造りに使用したとの言い伝えから名がついた「酒船石」は上面にくぼみと溝があり、水を流してその動きで占いをしたのではないか、さらに一部削り取り高取城の石垣に用いられたとも言われている。「飛鳥宮跡」に向かう。ここは6世紀末から7世紀後半の宮殿跡、時期の異なる遺構が重なって存在することが調査で分かっている。ここからは大和三山の「香久山」「耳成山」が、そして蘇我氏の邸宅があった「甘樫丘(あまがしのおか)」が望める。少し歩いた所が「飛鳥京跡苑池(きょうあとえんち)」ここは庭園遺構で外国使節などを歓迎する饗宴の場として利用されたらしい、日本初の本格的な宮廷庭園である。
飛鳥2
(写真はクリックで大きく表示されます)
 「吉野川分水」の説明を聞き、最終地の川原寺跡に。川原寺は飛鳥四大寺に数えられた大きな寺であったが、他のお寺(薬師寺、大官大寺、飛鳥寺)が都を移すたびに移転したが川原寺は飛鳥にとどまっている。

 ここで本日の「飛鳥の宮跡を巡る」は終了。いつもながら案内の山下さんには興味深く、分かり易く、楽しく案内をしていただき有難うございました。
(文/澤田章夫)

6月~8月の行事予定

予定表2306-2308

予定表はクリックで大きく表示されます

雨天決行以外の屋外行事について、前日17時発表の気象庁の天気予報で、
 該当地域の行事当日の午前中の降水確率が60%以上の場合、中止です。
 詳しくは当クラブの概要紹介を参照願います。