京とおうみ自然文化クラブ

「京(みやこ)とおうみ自然文化クラブ」は、認定NPO法人シニア自然大学校の京都府・滋賀県の地方組織です。旧ブログは左下リンク集より閲覧できます。

2022年08月

例会 8月23日(火) 「瀬田公園湿地の植物観察会」の報告

 猛暑が続く中、「今月は参加者が少ないのでは」という予想に反して、集合の瀬田駅には多くの参加者が集まりました。会員27名、一般参加3名の合計30名でした。瀬田駅からバスに乗ること10分あまり、朝倉のバス停で下車。今回のリーダーは、瀬田公園で長年湿地の植物観察を続けておられる斎藤ちづみさんです。集合10時、解散14時、暑さを考慮して少し早めに終了しました。

 瀬田公園の入り口で、リーダーの斎藤さんから簡単なコースの説明と植生の特徴の説明を受けました。下長尾池~上長尾池周辺を観察。湿原は貧栄養でそこにどんな植物が集まるのか観察してください。さらに、湿原は木陰もなく暑いコースを歩きます。水分を十分に摂って、熱中症対策をしてくださいとの説明と注意がありました。
 下長尾池に行く途中、足早でしたが樹木観察をしながら歩きました。アカメガシワ(トウダイクサ科)には果実がたくさんついていました。雌雄異株でこれは実をつけているので雌木です。「木には雄木(オギ)と雌木(メギ)があることを初めて知った」という方もおられました。ヤマコウバシ(クスノキ科)にも実が付いてるが、この木は雌木だけしかない。なんと雌木だけで実をつける構造になっている、日本中クローンの木だという話でした。

下長尾池
下長尾池
 いよいよお目当てのサギソウの観察へ。池のほとりに純白の白い花がかたまって咲いていました。参加者の興味が一斉にサギソウに集中し、顔を近づけて観察、カメラに収める、リーダーの説明を聞くなど、一気に観察モードになりました。その姿は、本当に白鷺が飛んでいるように美しい。花弁は3枚で、1枚の側唇弁が変化して、両側の唇弁(シンベン)は扇形で縁がギザギザに細かく裂けています。そして、長い距(キョ・3cm位)があり、そこに蜜が入っている。その蜜を求めて、長い口吻(コウフン)を持ったスズメガがやってくる。これまでスズメガはホバリングで蜜を吸うと考えられていましたが、最近の研究でギザギザの花弁の縁は昆虫が止まりやすい構造になっているのだということがわかりました。ギザギザは昆虫の足場だったのです。
 さらに、サギソウはどのように増えていくのか。地下茎を伸ばし球茎(球根)を作り、どんどん増えていきます。それで同じ場所にたくさん集まって咲くのです。そんな説明を皆さん熱心に聞き、そして質問も次々とありました。サギソウは環境省の準絶滅危惧種です。瀬田の湿地でも年々減っているとのことです。盗掘や踏み荒らし、温暖化などいろいろな要素があるのでしょう。私たちも足元に気をつけて観察しないといけません。
 ミミカキグサ(黄色の小さな花)、ホザキノミミカキグサ(紫いろの小さな花)、モウセンゴケなどは、昆虫を捕まえて栄養にする捕食植物です。その他には、アリノトウグサ、コケオトギリソウなど観察しました。どれもミクロの世界でルーペがないと観察できないものばかりです。

 上長尾池では、イソノキ(果実が成っていました)、ノリウツギ(花)、カヤツリグサ科の植物、カモノハシ(イネ科)など多くの植物を観察しましたが、ここでの主役はハッチョウトンボでした。日本一小さなトンボとして知られ、体長は2cm位でしょうか。皆さんカメラを構えて、チャンスを狙っていました。

上長尾池
上長尾池
 午後からは、この公園を管理しておられる西武造園の職員の方も加わり、湿原の説明をしてくださいました。この湿原の近くには高速道路が通っていて鹿もイノシシも入ってこられない、そのため食害に遭わずに自然が残されているとの話が印象的でした。最後に東屋で集合写真を撮って終了となりました。

 大変蒸し暑い日でしたが、具合の悪い人もなく最後まで一緒に観察できました。皆さまお疲れ様でした。また斎藤さんには長時間にわたり詳しい説明をしていただき、ありがとうございました。たくさんの花や木の説明をしたいのですが、紙面の関係で書ききれません。写真をアップしますのでそちらでお楽しみください。 (文/やよい)

瀬田公園
写真はクリックで大きく表示されます

例会 7月26日(火)「大津市文化ゾーン公園きのこ観察会」の報告

 今年も、シニア自然大学校・菌類研究会メンバーの応援を受け、きのこ観察会を実施した。参加人数は会員14名、菌類研究会からの応援2名の計16名。案内は土佐さんと菌類研究会の木村さん、サポーター役として同研究会の田中さん。以下の本文は土佐さんの報告書から引用させていただきました。

 文化ゾーン公園にて、きのこ観察とその説明を10時10分より13時00分まで、熱中症対策とコロナ対策を取りながら行った。今回も公園事務所より同定用のきのこ採取許可を受け、必要最小限のきのこ採取を行った。公園内の東屋で遅めの昼食後、13時30分より14時30分まで、採取してきたきのこの同定とその説明を行った。この間、参加者は全員マスクを着用し、密を避けながら説明を聞き、観察した。

220726-01
 当初は文化ゾーン公園から源内峠まで観察する予定であったが、発生きのこの種類が多く、途中での質問も多くあった。そのため文化ゾーン公園だけで時間を要し、同定後に源内峠へ行く時間が取れなかったので、ここで終了とした。

 きのこ種は「ベニタケ科(15種)、イグチ科(9種)、テングタケ科(8種)」を中心に、合計59種が観察できた。特に、ベニタケ科の「カワリハツ」はシイ科の樹木がある所では数多く観察できた。また、美しい姿のテングタケ科の「ガンダケ」「ヘビキノコモドキ」「テングツルタケ」、イグチ科の「キクバナイグチ」等が観察できたのは幸いであった。すぐ横の里山「龍谷の森」ではイッポンシメジ科のきのこが数多く観察できるが、文化ゾーン公園では見られないのが不思議であった。

220726-04

 今回の観察会は、晴天の35近い気温の中、全員マスクを着用し、快適な環境とは言えなかったが、体調不良を訴える人も無く、数多くのきのこを観察し、勉強できたのは非常に有意義であった。なお、今回観察した「きのこ観察会記録」は、公園事務所の要望により「シニア自然大学校・京とおうみ自然文化クラブ」として公園事務所に提出した。

220726-02
 その他、観察会の中で
  ① 傘の裏はひだ状とスポンジ状があり、イグチ科のきのこはスポンジ状。
  ② 地上から生えるキノコは地上に出てから傘が開くが、シロハツモドキは地中で開くので、土や落ち葉などが乗っかっていることで見分けられる。
  ③ マイタケにはタンパク質分解酵素が含まれているため、すき焼きに加えると肉が柔らかくなったり、生のまま茶碗蒸しに入れると卵のたんぱく質が分解されるため固まらなくなる。 などの興味深い話が聞けました。

 最後に、案内していただいた土佐さんと木村さんには厚くお礼申し上げます。 (文/讃良&土佐)

220726-03
(写真はクリックで大きく表示されます)