京とおうみ自然文化クラブ

「京(みやこ)とおうみ自然文化クラブ」は、認定NPO法人シニア自然大学校の京都府・滋賀県の地方組織です。旧ブログは左下リンク集より閲覧できます。

研修会 1月29日(月)「季節の植物観察」の報告

 朝方は冷え込みましたが、研修会が始まる頃には陽が差し込んで暖かくなってきました。参加者は会員26名、一般1名、講座生4名(計31名)で、その中には「講座で受けた冬芽観察で興味を持ちました」と言う挨拶もありました。講師の齊藤さんが、「京都植物園の樹木も多くがこの時期は落葉しているのできれいに見渡せますよ。」と言われるように100周年の文字に植栽されたハボタンと寒咲きハナナのすっきりしたワイルドガーデンの中を歩き出しました。

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 先ず、「枝の赤さが目を引いたので、これから観察しましょう」と言われて、鮮やかな赤のシラタマミズキをのぞき込みました。先が尖った冬芽が枝先に見られます。その下にある左右から出ている対の枝の位置が十字対生になっているという説明を受けました。次のクマノミズキも同じミズキ科で、黒っぽくて尖った冬芽がよく似ていました。すっかり葉を落として大きな果実がぶら下がっているのはオオアブラギリで、「この時期に枝ぶりもみておきましょう!」と言う観察ポイント。この実は工業用の油に使われます。
 ひと月ほど前には、黄色く色づいたハート形の葉がまだ付いて香ばしい香りがしていたカツラ。頂芽を見ると対生した2個の円錐形をした冬芽が見られます。何度お聞きしても難しい「仮頂芽」の言葉は覚えましょうと言う事です。種を飛ばし終えた小さなバナナ型の殻が残っていたので割ってみると、先端に翼のある種子が入っていました。バイカウツギも対生で仮頂芽をつける例です。葉痕の中に冬芽が入っている隠芽で、葉痕が膨れ上がっていることがわかります。観察時は少し割れて緑が見えました。トサミズキの細長い葉芽と丸い形の花芽の違い、オニグルミは葉痕がユニークな表情で皆さんにも人気なようで「羊に見える!可愛い!」と言う声が聞かれました。この羊の顔に見える葉痕は、枝に残る葉がついていた痕のことです。目鼻などの表情に見えるものはその中の維管束の痕です。冬芽は裸芽タイプの様で、外側の葉は冬の寒さから冬芽を守るような帽子に見えました。

 そこから冬芽の見方で特徴を整理しながら進んで行きました。

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 センダンも可愛いお猿さんに見える?ミツバウツギの果実は面白いブルマ型、イヌビワの筆ペン、アブラチャンはクスノキ科では一番小さな冬芽なのに一番大きな実をつけ、葉芽と花芽で「小」の字のように見えます。ヤマコウバシの所で「この木は枯れたのでしょうか?」と聞かれると、皆さんはよくご存じで「借金取りの木」とか「受験生の木」と答えられていました。「では、どうして枯れ葉を春までつけているの?」と質問されて、その答えを丁寧に説明して頂きました。秋に葉柄と枝をつなぐ離層を作るが、暖かくなってから完成させて落葉すると言う事です。クロモジ属で混芽をつけるのはヤマコウバシだけ、しかも、国内に自生するヤマコウバシは雌株のみで、雌花だけで結実するという不思議な樹です。
 シナユリノキなどのモクレン科の頂芽は大きくてアヒルのクチバシのようで、この芽鱗は托葉が変化したもので、托葉痕は枝を一周するのも特徴だそうです。シラキは、とんがり帽子をかぶった可愛い小人のように見えました。
 途中で名前は不明ですが、岡本さんが見つけたキノコの説明をしてくださいました。キノコと言えば秋と言う訳でもなくて、4月の「春の御三家」と呼ばれる①ツバキキンカクチャワンタケ②オオセミタケ③トガリアミガサタケは春を告げるキノコだそうです。

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(写真はクリックで大きく表示されます)
 鋭い棘をつけて葉痕はグルッと幹を一周しているタラノキも目を惹きます。アオモジシンジュトチノキ、三大美芽のコクサギ、表情がかわいいアジサイの頂芽は裸芽で葉脈が見えています。大小の2つの副芽を持つエゴノキハクウンボクサンシュユの樹は球状の冬芽が見えました。これは花芽だそうで先が開きかけて、中が黄緑色になっていることに気が付きました。もうすぐ咲き始めるのでしょう。メグスリノキは冬芽がついている枝先まで柔らかそうな毛に覆われ、オオモミジは冬芽を深く包んでいる膜質鱗片の毛糸のパンツ(イロハモミジとの比較)で冬を乗り切る工夫をしているのを見て観察会は終了しました。

 齋藤さんの深い知識と解りやすい説明でとても充実した観察会となりました。寒い中を参加された今日の会員や実習生もとても熱心でした。最後までルーペでのぞき込んだり、冬芽に触れたり、興味を持たれていました。まだ春は遠いかもしれませんが、今日の冬芽がどんな花を咲かすのか待ち遠しいですね。   (文/大)

2月~4月の行事予定

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予定表はクリックで大きく表示されます

★雨天決行以外の屋外行事について、前日17時発表の気象庁の天気予報で、
 該当地域の行事当日の午前中の降水確率が60%以上の場合、中止です。
 (2月16日、3月22日は50%以上で中止)
 詳しくは当クラブの概要紹介を参照願います。


例会 1月11日(木)「幕末伏見の旧跡を訪ねる」の報告

 2024年最初の例会は「幕末伏見の旧跡を訪ねる」で京阪電鉄、丹波橋駅に集合(10時)。本日の案内は歴史・文化にとても詳しい松浦さんにお願いする。参加者は会員43名と一般参加2名の計45名で今年度の例会では断トツの参加者である。これは企画内容の面白さと案内の松浦さんの話を楽しみに来られたものと推測する。

 駅前広場で案内開始、「丹波橋」のいわれはとの問いかけ、秀吉の時代に丹波守に橋を作らせたからとのこと。またこの広場は「呉竹文化センタ-前」呉竹は中国の呉の国から竹が持ち込まれたに由来するらしい。
 最初に訪れた「勝念寺」境内には早くもソシンロウバイが咲く。そして織田信長から賜った「身代釜敷地蔵尊」「閻魔法王自作霊像」が祀られており、閻魔さんの道衣も特徴がある。
 「金鵄正宗」ここも風情ある酒蔵、名前の由来を教えていただく、神武天皇までさかのぼる話であった。

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 「大黒寺」は別名薩摩寺で薩摩藩の若手であった西郷隆盛や大久保利通らが集まった場所、寺田屋事件で犠牲となった有馬新七等九士の墓があり、碑文は西郷隆盛筆である。
 「金札宮」では京都市の天然記念物樹齢1200年のクロガネモチに感嘆する。樹形がとても素晴らしい。ここで京都盆地の説明、水が豊富で221憶トンの水が地中に蓄えられている、これは琵琶湖の水量の8割に当たるとのことで掘れば水脈に、100万年前の地殻変動によるそうだ。
 少し歩くと「寒天発祥の地」の立て札があり説明によると寒天は「黄檗萬福寺の隠元和尚」による命名。
 「薩摩藩邸跡」は現在、松山酒造の建物、ここであの篤姫も江戸へ上る前に宿泊していた。

 高瀬川沿いをしばらく歩く、エノキにヤドリギがやたら目につく、レンジャクの好む実がたくさん成っている。松本酒造の煉瓦造りの倉庫と煙突が目の前に。春先菜の花を前景とした景色は最高と思われる。
 そして坂本龍馬が寺田屋で襲われた時に材木小屋で身を隠した所も確認、当時この界隈は材木小屋が立ち並んでいたらしい。
 昼食は国内諸河川の整備そして高瀬川を開削した「角倉了以」の碑がある旧高瀬川の川畔でとる。
 午後は「長州藩邸跡」「三十石舟乗り場」米一石は150㎏とのことで、一石は一人が一年間に食べるお米の量に当たる。

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 寺田屋騒動の舞台である「寺田屋」は歴史を感じる外観である。掛けられていた提灯の絵柄も面白い、刀の鍔(つば)のデザインか?
 「長建寺」は独特の形をした赤い竜宮門が印象的。

 「月桂冠、大倉記念館」沿いに歩き「鳥せい本店」に。ここで日本酒の話、1973年を100とすると現在は1/3の消費と激減しているが今は海外の需要が増加とのこと。
 「黄桜酒造」の銘酒「黄桜」は萌黄色のサクラでギョイコウか?
 「電気鉄道発祥の地」の碑、ここが国内初の電気鉄道の始まりである。
 「駿河屋本店」に立ち寄るが、ここは分家で今の当主は11代目とのこと。後ほど訪ねた「総本家駿河屋」の創業は室町時代中期の1461年で今は22代目らしい。
 「西岸寺」ここの地蔵菩薩に油を注いで供養したところ大いに商売が繁盛したそうだ。

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 「伏見納屋町小路」は最近出来たものか伏見稲荷をまね鳥居が並ぶ、そこを通り抜けると商店街に「源空寺」に立ち寄る、秀吉が伏見城から移築した二層からなる山門があった。
 再び商店街に戻り京阪伏見桃山駅前で一次解散(14時20分)。残った約半数の方は京料理の名店「魚三楼」、「総本家駿河屋」の建物を見ながら「伏見奉行所跡」に行く。鳥羽伏見の戦いでは旧幕府軍の拠点であった場所。あとで聞いたが雅楽の越天楽に因む「黒田節発祥の地」の説明を受け、本日の最終は「御香宮神社」の境内へ。ここで終礼。約13000歩の散策でした(14時45分)。

 松浦さんには丁寧にかつ面白く、興味深く説明をいただき感謝申し上げます。(文/澤田章夫)

例会 12月13日(水)「三好長慶の三好山城とJT生命誌館の見学」の報告

 JR高槻から市営バスで20分ほど、上ノ口で降り、老人ホームを左に見ながら下って行った。摂津峡の石標を左折すると5分ほどで三好山入り口の標識。細い山道になるので前日の雨が心配で、足元に注意しながら歩いた。芥川の流れを右下に感じながら、山裾に作られた細いがけ道を上って行く
 15分歩くと城山城跡の石柱。野ブドウやムラサキシキブを見ながら、見晴らしの良い所へ。木株の椅子が4~5個置かれている。高槻市内が一望され、遠くにあべのハルカスが見える。すぐ近くに「三好山へ6分」の木札。10分で山頂へ。三好長慶の芥川山城跡と書かれた大看板があった。
 三好長慶は阿波・徳島から摂津に進出、主君・細川晴元に替わって1553年入城し、7年間座城したとある。足利将軍家を擁立せず、畿内一円11か国を支配、「芥川政権」を樹立した。織田信長に先駆けた天下人と称される所以である。標高182・7メートルの山上に本丸・出丸・田の丸など、鉄砲が普及する前の戦国の山城を偲びながら城跡を後にした。
 来た道を戻り、竹林を越えて塚脇・上ノ口への下り道を案内する標識に従って降りる。5~6分ほどで視界が広がる。黄金の里ホームから妙力寺前を通り、千念院を過ぎて川に出る。渡って右へ進むと前方にアクアピア芥川が見える。15分ほどで着き昼食。バスと川沿いを歩く2班に分かれ、JTへ向かう。

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 JTは文字通り日本たばこ産業。生命誌研究館と銘打ってるだけに、生きること、生命に関わることを扱っているのか。楽しみに訪ねた。JR高槻から歩いて10分。案内された部屋で各階ごとの説明を受け、3班に分けて案内された。一階のセンターに階段があり、最初の一言が「階段の一段が一億年です」。38億年の生命の歴史があるので、階段が38段かと思いきや、そこまで長くない。12~13段であった。ご愛嬌である。固いと思いがちだが意外と人は柔らかい。
 1階の展示ホールは地球上の生きものが、個体が生まれる発生について語り、細胞のゲノムDNAを受け継ぐ仲間であることを見せてくれる。実物の骨格標本を見ながら形の意味と面白さが実感できる。木の枝に擬態するナナフシや肺魚などの実物も展示されており、興味深い。「生きている」を見つめ「生きる」とは何かを考えるゲーム展を見てついつい自分の生き様を考えてしまう。地球の誕生は46億年前と言われるが、その6億年後に生命の出現があり、500万年前の人類誕生までに長い長い道のりがあった。
 2階のギャラリーでは、「エルマー・バイオヒストリ-の冒険」展や「生きもの上陸大作戦」展が展示されている。地球上の動物に驚きながら、その生態が楽しめる。3階は実験室が中心で非公開。毎月第3土曜日、生命誌の日に催しを開催している。

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 (写真はクリックで大きく表示されます)

 4階の屋上にチョウのレストラン「食草園」が設けられている。コンクリートで囲まれた小さな庭に虫や鳥が訪れ、春夏秋冬を通じて四季折々の変化が見られる。蝶の幼虫が食べる植物は種ごとに決まっていて、この食草園にはさまざまな食草が植えられている。ミカンにナミアゲハ、レモンにクロアゲハ、クスノキにアオスジアゲハ、ブロッコリー・ハボタンにモンシロチョウなど24種類の食草とチョウの関係が分かる。初めて見る実景であり、おもしろい所であった。   (文/吉田)

例会 12月5日(火)「琵琶湖の水鳥観察」の報告

 近江今津駅に10時15分集合。参加者は一般の方1名を含めて合計16名。当日は雨が心配でしたが、無風の曇りで観察には絶好のコンディション。案内役は毎年お世話になっている佐々木さん。駅の待合室で、佐々木さんからカモの雌雄の見分け方や琵琶湖でしか見ることができないホオジロガモ、ハジロカイツブリ、コハクチョウなどを説明された後出発。行程は、駅近くの港付近で観察後、湖岸を南下し湖面と湖岸の松林に鳥を観察しながら新旭水鳥センターを目指します。ただ、当日は休館日のため折り返して近江今津駅に戻ります。

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  観光船乗り場の岸壁からはオオバンの群れを観察。オオバンは体が黒く、嘴が白いことから「サタン」と呼ばれています。飛来する南限は茨城県の霞ケ浦ですが、なぜ琵琶湖までやって来るのか理由は不明とのこと。少し南下した別のテラスからは湖面にカンムリカイツブリキンクロハジロを確認しました。カンムリカイツブリは大型のカイツブリです。佐々木さんからカイツブリの名前の由来を教えていただきました。ネットで調べると、水を「掻いて潜る(掻きつ潜りつ)」が転じたか、「カイ」はたちまちの意で、潜る時の水音が「ツブリ」に転じたとする説など、いろいろあるようです
 すぐ近くの湖岸からアオサギが飛び立ちました。さらに南下すると船着場のポールに留まっているトビ電柱にコサギ樹上にカワラヒワの群れを見つけました。沖合に設置された架台の上にはカワウが数羽留まっていました。他の水鳥よりも大きいので目立ちます。湖面にはオオバン、ヒドリガモコガモ、カンムリカイツブリ、キンクロハジロ、ホシハジロカワアイサなどを確認しました。

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 新旭町に入り、しばらく歩くと道路脇に鳥居があり、湖に面して二つの石が祀られています。二ッ石大明神と呼ばれ、渇水になって湖面水位が下がると沖合い100mの地点にある2つの岩が露出しますが、その代わりが湖岸に祀られた2つの石のようです。
 湖畔道路から別れてサイクリングロードに入ると遠くには雪を抱いた伊吹山が見えます。竹生島遙拝所跡の石碑を過ぎると木製のやぐらがありますが、昔栄えた木津(こうつ)港の常夜灯として使われていました。時々、立ち止まっては湖面に鳥を探します。近くの湖面にはハジロカイツブリがいました。さらに行くとオナガガモ、そしてこの日のハイライトのコハクチョウが4羽いました。白くて大きいので目立ちます。水中に首を入れて餌を採ったり優雅に移動する姿を見ることができました。一方、陸地に目をやると1羽のトビが木に留まっていました。しばらく歩いた後、屋根付きの屋外休憩所で昼食。

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(写真はクリックで大きく表示されます)
 昼食後はさらに南下し、新旭水鳥観察センター付近まで来ると湖面には多くの水鳥がいました。水鳥センターは休館日のため手前で折り返して今津駅まで帰る途中、湖畔にダイサギを見つけました。くちばしの色は季節によって変わり、冬期は黄色、夏期は黒色とのこと。すぐ近くの樹上にはシメが1羽留まっていました。さらに歩くと民家の屋根にジョウビタキを見つけ、浜ではカワラヒワが群れていました。駅に近づくにつれて水鳥の数は少なくなりました。今津駅前の広場で終礼。佐々木さんからお手製カレンダーが3名の方に進呈され、午後2時頃に観察会を終了しました。

 時間の都合で鳥合わせはできませんでしたが、後日佐々木さんから報告がありましたので以下に紹介します。出現した鳥は計30種。内訳は、陸鳥(留鳥)はスズメ、ハシブトガラス、ハシボソガラス、ヒヨドリ、ムクドリ、カワラヒワ、ホオジロ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、トビ。陸鳥(冬鳥)はシメジョウビタキ)、水辺の鳥(留鳥)はコサギダイサギ、アオサギ)、水鳥(留鳥)はカワウカイツブリ、カルガモ、水鳥(冬鳥)はオオバンカンムリカイツブリハジロカイツブリコガモ、マガモ、ヒドリガモハシビロガモオナガガモキンクロハジロホシハジロカワアイサコハクチョウ。このほか、参加者の方が飛翔中のホオジロガモを撮影されたので、これを合わせると計31種となりました。ご案内いただいた佐々木さん、ありがとうございました。(文/讃良)