〈コース〉
〈コース〉
天候 : 曇りのち雨 案内 : 海老原、新堀 参加者: 会員15名、実習3名
10月半ば数少ないが秋に咲く花や猛暑に耐え抜いた木々が、それぞれの方法で種子散布をする様子を観察した。
・ベゴニア(シュウカイドウ科)
晩秋まで咲き花壇を彩るベゴニアは、一見オバナとメバナの見分けがつきにくい。なぜ似ているのか?メバナは蜜も無く花粉も出さない為、虫にとってメリットが無い。ゆえにメバナはメシベの先にオシベの黄色花粉に似たものを作り虫を誘う。皆さん熱心に見比べておられた。
・カンコノキ(トウダイグサ科)
名前の由来は、1.葉が船底平らなカンコ舟に似ている。 2.果実の形が 唐菓子の「カンコ」に似ているとのこと。
先月はクリーム色の小さなオバナが 咲いていたが今回はメバナばかり見つかり、小さなカボチャ形の果実がいくつか出来ていた。夜、花の匂いに誘われたハナホソガが 受粉を手伝い、受粉させたメバナに卵を産み幼虫が種子を半分食べ残す。カンコノキとハナホソガは、絶対的共生関係。
・ノブドウ(ブドウ科)
青、紫、白色どの実が 甘い?種子が熟しているのは白い果実で甘い。
・ツリフネソウ(ツリフネソウ科)
果実の果皮が伸びて膨らんでいた。ツリフネソウが生息する水辺は 増水で流れる危険性あり。一年草ながら上流にも踏みとどまれるように出来るだけ 種子を遠くにはじけ飛ばす。
・サクラタデ(タデ科)
ピンク色の花は 直径8ミリもあり、タデ科で最大。ピンク色は、花弁ではなく愕片なので長持ちし、種子を包み込んだまま残るとの事。秋には茎の節が太くなり、葉の鞘も膨れ、そこに閉鎖花を作り増水のリスクに備える。
・ウバユリ(ユリ科)
近くの山から果実を持参。参加者にウバユリの果実の中身を調べて頂き、種子が整然と収納されている様子や種子に薄膜の翼がついている様子を観て頂いた。晩秋強風が吹くとタネは紙吹雪のように舞い上がる。
・ホトトギス(ユリ科)
オシベが先熟その後3裂したメシベの柱頭が下がり他の株の花粉が付きやすくなる。黄色は蜜標で外花被片(少し大きい花弁)の基部に蜜をためた丸い距があり。
・キイジョウロウホトトギス(ユリ科)
例年より遅れたがやっと咲いてくれ安心した。下向きの釣り鐘状の花は意味があって全開しない。少し大きなトラマルハナバチなどが大歓迎のお客様。虫が狭い筒状の花に潜り込み、奥にある蜜を食べた後、後ずさりしながら出て行ってくれるのが狙いだ。こちらも 雄性先熟。
・ツクバネ(ビャクダン科)
香木のビャクダンと同じく半寄生の樹木。雌雄異株でオバナもメバナも緑色で小さい。匂いでハエを呼ぶ。果実はつく羽根にそっくり。細い苞が4枚付き晩秋 茶色くなり、 回転しながら 風に乗って落下して行く。
・ヤブタバコ(キク科)
ガンクビソウの仲間でうつむいた頭花がキセルの雁首のように見える。ヤブタバコの根生葉や下部の葉はタバコの葉に似て大きく、シワがある。ヤブタバコの不思議は、茎が高さ約50センチ(場所により異なる)で いったん成長が 止まり、そこから四方に茎が広がる事である。晩秋、枯れた花びらや総苞片が落ちると茶色くなった種子は粘液を出し 四方に広がった茎の下を通る動物にしっかりくっつく、と言う策略。
・ハゼノキ(ウルシ科)
紅葉し果実は黒く熟していた。核は硬いが それを包む中果皮はロウ(ろうそくの原料となる) があり、鳥へのご馳走。カラス、キツツキ類、カラ類も よく訪れる。漆器に塗るウルシは別の種とのことだが、9000年前の縄文時代に作られた漆器が 青森の亀ヶ岡で発掘された。(京都文化博物館にて展示)
・ヤマボウシ(ミズキ科)
中国の常緑ヤマボウシが秋でも花を咲かせていた。4枚の白い総苞片の中心に淡緑色の小花が咲く。30個ほどが丸く集まり、受粉が出来なくても個々の花の基部が膨らみ全体がくっつき丸く育つ。赤い果実はよく見ると六角形の総合体。甘く動物に大人気。
・ハナミズキ(ミズキ科)
ヤマボウシに近い種で園芸植物。花はヤマボウシに似ているが果実はそれぞれ独立している。北アメリカ産でこちらは鳥の口に合うサイズである。
・ハシバミ(カバノキ科)
ヘーゼルナッツはセイヨウハシバミの果実。花は春に咲きメバナは赤い柱頭だけ目立つ。オバナの集合体は 尾状となって垂れ下がるが 秋からもう準備している。これで冬を越すらしい。
・シラキ(トウダイグサ科)
少し紅葉していた。枝や幹を切ると白い汁が出て 幹の内部もやはり白い。果実は 直径約2センチ弱で丸いがやや3つに膨らむ脂分多く食用や灯油となる。
雌雄同株、若い幹は青い。果実が不思議な形。メバナが咲いた後子房の果皮が5つに分かれそれぞれ細長い袋状になって中に種子を抱く。秋になりボート状になった。果皮は樹木の上で茶色く乾くと、種子を縁に乗せたまま風に吹かれて回転しながら落下する。種子は、炒ると食べる事が出来、コーヒーの代用にもなる。
・ネコノチチ(クロウメモドキ科)
果実は8月から11月になると黄色からオレンジ色、 赤色、黒色と変化する。色分けして熟した種子を少しずつ鳥に食べてもらう。名前の由来は果実が、授乳期の雌猫の乳首の形に似ているからとのこと。
・カンレンボク(ヌマミズキ科)
果実の形がバナナに似て個性的花はヤツデの花のように球状集合花である。ゆえに果実も始めは球状であるがやがてそれぞれのメバナからバナナ形の果実が出来る。一つの果実から多くの種子が出来る事から中国では子孫繁栄、縁起の良い木「喜樹」と呼ばれる。果実や根に含まれる「カンプトテシン」 が抗がん作用あり。
午前10時、叡山電鉄「一乗寺駅」に、会員40名、一般参加者3名の計43名が集合しました。今回は事前申込制にて参加者を募り、多くの方にご参加いただきました。澄み渡る秋空のもと、担当幹事である永井副会長の挨拶により例会が始まりました。道案内は私・岸本が担当し、ポイント解説用の資料も用意しました。
叡山電鉄は今年、開業100周年を迎えます。「きらら」や「ひえい」に加え、「舞」という名の新たな観光列車も登場予定です。また、一乗寺駅の西側、東大路通を中心とした駅周辺は、通称「一乗寺ラーメン街道」と呼ばれ、全国からラーメンファンが集う激戦区。個性豊かなラーメン店が20軒以上集まって、ラーメン好きの聖地となっています。
駅前から東へ進み、白川通を越えると、住宅街の中に「一乗寺下り松」があります。ここは江戸時代初期の剣豪・宮本武蔵が、吉岡一門と決闘を行ったとされる場所です。現在の松は当時の木を模して植えられたもので、周囲には石碑や案内板が整備されており、武蔵の足跡を辿ることができます。
さらに住宅街を進むと、緑に包まれた門が迎えてくれる「詩仙堂 丈山寺」に到着しました。詩仙堂は、江戸時代初期の文人・石川丈山が隠棲の地として築いた山荘で、現在は曹洞宗の寺院として親しまれています。堂内には中国の詩人三十六人の肖像を掲げた「詩仙の間」がありこれが、「詩仙堂」の名の由来です。
この日は2班に分かれ、交代で庭園を鑑賞しました。庭は中国の山水画を模した唐様庭園で、庭を降りていくと、竹筒が石に当たる「カコン」という音が響きます。これは鹿威し(ししおどし)と呼ばれる仕掛けで、かつては獣除けとして使われていたもの。丈山が考案し庭に設置したとされ、日本庭園の静けさに趣を添える風流な存在です。
庭では夕方に花の色が赤く変化するスイフヨウや、秋の七草のひとつであるフジバカマが見頃を迎えていました。秋の七草は薬草としても知られ、特にクズの根は「葛根(かっこん)」という生薬名で「葛根湯」に用いられることで有名です。
詩仙堂を後にし、「八大神社」に立ち寄りました。ここは、宮本武蔵が決闘の前に立ち寄ったと伝えられることで知られています。境内には武蔵の像が立ち、社殿は静かな佇まいで、周囲の緑と調和し、心を落ち着かせてくれる空間です。その後、圓光寺門前を通過し、山沿いの道を上って曼殊院天満宮の付近で持参した弁当で昼食をとりました。
昼食後は、「武田薬品京都薬用植物園」を見学しました。今回は団体での申し込みにより、職員の方3名にご案内いただきました。植物園は94,000m2もの広大な敷地に約1,900種の薬用植物が栽培・研究されており、漢方や民間薬に使われる植物のほか、世界各地の薬草やハーブが整然と植えられています。
この日は、展示棟、香辛料園、中央標本園、民間薬園、漢方処方園を中心に見学しました。園内では職員の方が「匂ってみては」「味わってみては」と声をかけてくださり、苦味のあとは甘味を感じるなど、一般の植物園とは一味違う体験ができました。また、口にしてはいけない毒草についても丁寧に教えていただきました。
漢方処方園では代表的な漢方処方(例:大建中湯)の構成生薬(山椒、乾姜など)を、対応する薬用植物(サンショウ、ショウガなど)で分かりやすく展示しており、理解が深まる工夫がされていました。
見学中は「へぇ~」「はぁ~」といった感心や驚きの声が絶えず、あっという間の2時間でした。園内には温室やツバキ園など、他にも見どころがありましたが、短時間ではすべてを回りきれません。ご案内くださった坪田さん、小島さん、安藤さん、懇切丁寧なご説明をありがとうございました。
見学終了後は記念撮影を行い、解散となりました。曼殊院へ向かう方々と別れ、坂道を下って鷺森神社に立ち寄り、午後4時頃に「修学院駅」に到着しました。 (文/岸本)











