・会場:京都府立植物園 2階研修室 ・時間:10時~12時
・講師:京都府立植物園 技術課長 平塚健一氏
今年の夏も猛暑続き。京都の前日の最高気温は39.1℃、こんな猛暑の中果たしてどれだけの人が来てくれるのか不安な気持ちで会場準備が始まった。いざ受付が始まると、あっという間に会場が埋まり、急遽別の部屋から椅子を運ぶこととなった。参加者は、会員59名・実習生15名・一般3名の計77名。会場は熱気に包まれながら、平塚課長の講演が始まった。冒頭で観覧温室では、今キソウテンガイという珍しい植物の雌花が約30年ぶりに咲き、人工受粉をしている。種が出来るのを楽しみにしてくださいとの紹介があった。
1.京都府立植物園の概要
日本最古の公立植物園として1924(大正13)年に開園。京都市左京区に位置し、文化遺産や大学に囲まれた景勝地である。年間の入場者数は約93万人で、公立植物園の中で日本一。その理由は、地下鉄北山駅から直ぐの好立地であるとのこと。交通の便がよいことに加えて、植生が豊かなことも魅力の一つだと思った。園の組織は、総務課と技術課に分かれ、技術課には企画係・温室係・花壇係・樹木係の4つがあり、全職員34名。こんな広大な敷地でかつ植生の変化に富んだ園に、たった34人しかいないことが驚きだった。
2.歴史の概要
大正天皇の即位記念として、第10代知事大森 鍾一が下鴨の土地を買収し博覧会計画をしていたが、財政難等の理由で博覧会の計画は断念した。その後植物園建設の案が持ち上がり、京都にゆかりの深い三井家同族会から約55万円(現在に換算すると約60億円)の寄付を受けて、日本で最初の公立植物園が誕生した。大森知事と三井家の尽力によって実現したものだ。開園当初の園丁(えんてい)さんの法被姿や、当時の地図を見ながら詳しい説明があった。初代園長郡場 寛(こおおりば かん)は39歳の若さで園長となり、その後京大の教授や、シンガポール植物園の園長にも就任。第2代園長菊池 秋雄は、中国からシダレエンジュを植物園に日本初導入した。その樹形は龍の爪に見立てられ見事な枝ぶりである。ちょうど今花が咲いている。またナシの品種改良に貢献し「ナシの神様」と云われている。など歴代の園長の業績についての話が続き、昔の人は若くして業績を残されたと感心しながら聞いた。
第二次世界大戦で日本は敗戦し、植物園は進駐軍(米軍)の家族住宅となった。くすのき並木より北側の多くの樹木が伐採され、園は大きく姿を変えてしまった。1946(昭和21)年に接収され、高級軍人の住宅や教会などが建てられ11年もの間植物園は姿を消してしまった。1957(昭和32)年にようやく返還された。再開園までに実に4年を費やした。1961(昭和36)年2代目の温室が完成し、開園を待ち望んでいた多くの府民が押し寄せた。植物園にも戦争の歴史があったことを忘れてはいけないと思った。
京都府立植物園条例があり、①府民の憩いの場(都市公園的機能)、②教育・研究の場(植物の鑑賞・学習・研究)、⓷多様な植物の収集・展示(約12000種、10万本)の3つの内容が定められている。京都府立植物園では、12000種の植物を展示しているが1種当たりの個体数が少なく、その種類ごとに自生地や育て方が違い、様々な工夫と手間がかかっている。また、植物展示の教育的配慮という観点から植物のラベルを設置し、必要に応じて解説をすることを定められている。ラベルの種類やその見方の説明があった。
多様性とは生態系の豊かさを指し、具体的には①生態系の多様性(森林・河川・農地など)、②種の多用性(様々な生物種)、⓷遺伝子の多様性(種内の地域差や個体差)に分けられる。植物園では、絶滅危惧種の保全に取り組んでいる。絶滅危惧種園のエリアでアマミアセビなどの保全や、バックヤードの保全温室で絶滅が危惧されている植物の育成や保全などに取り組んでいる。
5.バックヤードでの取り組み
一般公開されていないエリアで、植物の育成・保全・研究を行っている。園の全敷地面積24万㎡のうち2万㎡を占め、鴨川沿いの園内西側にある。日本の植物約7000種のうち、2900種が固有種。絶滅危惧種は1786種で全体の25%に当たる。植物園では約300種の絶滅危惧種を保全している。日本植物園協会との連携を図り、地域野生植物保全拠点園として、近畿地方の植物を守る取り組みをしている。その一例として、京都府と福井県にまたがる青葉山(若狭富士)でのオオキンレイカの調査動画を見せてもらった。現地では鹿の食害などで絶滅が危惧され、鹿が行けない断崖絶壁の場所に自生している。そんな場所へ長靴を履いた平塚課長が登って行き、危険な場所での調査をしておられた。オオキンレイカはオミナエシ科の多年草で、京都府レッドデータブック2015で絶滅寸前種として指定されている。
6.その他
ショクダイオオコンニャク(世界で一番背の高い花)や、アフリカバオバブの開花動画も見せてもらった。ショクダイオオコンニャクは真夜中に開花し、開花時に発熱している様子がはっきりと見えた。おまけに、開花したばかりの花からは、臭い匂い(死体臭ともいわれる)が漂うそうだ。
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今回京都府立植物園や平塚健一課長には、会場の提供や資料の用意、そして講演と、すべてにおいてお世話になり大変感謝しております。有難うございました。参加の皆さまもきっと京都府立植物園に、より興味を持っていただけたのではないでしょうか。毎月の観察会でお待ちしています。 (文/やよい)









