京とおうみ自然文化クラブ

「京(みやこ)とおうみ自然文化クラブ」は、認定NPO法人シニア自然大学校の京都府・滋賀県の地方組織です。旧ブログは左下リンク集より閲覧できます。

10月~12月の行事予定

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予定表はクリックで大きく表示されます


雨天決行以外の屋外行事について、前日17時発表の気象庁の天気予報で、
 該当地域の行事当日の午前中の降水確率が60%以上の場合、中止です。
 詳しくは当クラブの概要紹介を参照願います。



例会 9月17日(火) 「平安神宮庭園とその周辺を散策」の報告

 朝から暑かったが、久しぶりの活動日、32名の方が参加された。
「平安神宮庭園とその周辺を散策」というテーマで地下鉄蹴上駅集合。

 まずは、蹴上インクラインに向けて出発、インクラインの下を横断するためのトンネル「ねじりまんぽ」を通る。出入口には、北垣国通(疎水がつくられた当時の京都府知事)による扁額「雄観奇想(ゆうかんきそう)」(見事な眺めとすぐれた考え)「陽気発処(ようきはっするところ)」(精神を集中して物事を行えば、どんな困難にも打ち勝つことができる)が掲げられている。構造は台車に乗った船が通る重さに耐えられるように内壁のレンガを斜めに巻き、トンネル自体もインクラインと直角にならないように斜めに掘られている。(すごい土木技術ですね。)ねじりまんぽを抜けると、インクラインの土手には、アレチヌスビトハギの花が満開、引っ付き虫の実もつけていたので、引っ付かないように通り抜けるのに苦労した。土手を上がった広場で、今日のコース予定の説明を受ける。案内は、澤田勉さん、海老原さんのお二人。
 蹴上インクラインは、全長582mの世界最長傾斜鉄道跡、高低差約36mの琵琶湖疎水の急斜面で船を運航するために敷設された傾斜鉄道跡です。明治24年から昭和23年まで運航された。現在は、京都市文化財に指定される。本願寺水道の水源地、義経地蔵田邉朔郎の像を見学。田邉朔郎は、大学卒業と同時に京都府知事に招かれ、琵琶湖疎水の工事に携わり、蹴上水力発電所も建設した。(暑さのため、水分補給休憩。日差しがきつい。)
 疎水沿いを歩いて南禅寺に行く。疎水を流れる水が涼しく、暑さが少し癒される。水路閣に到着。煉瓦づくり、アーチ構造のおしゃれなデザインで、日本人のみの手で設計施工され、京都市指定史跡である。今日は観光客もまばらで、素敵な写真が撮れた。青モミジと水路閣がきれい。皆さん、各々写真撮影し、南禅寺へ。

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 南禅寺は、鎌倉時代後期正応4年(1291年)に亀山法皇が自らの離宮を禅寺に改め、無関普門禅師(大明国師)を開山に迎えたことが始まりで正式には太平興国南禅禅寺と号する。南禅寺といえば、石川五右衛門の「絶景かな。」のセリフで知られる巨大な三門が有名。圧倒的な大きさと力強い柱がすごい。(日陰を探し三門を眺めながら、また水分補給。)知恩院、仁和寺と京都三大門の一つである。三門を背景に「ハイ、チーズ」と全員で記念撮影、暑さにも負けず、皆さん素敵な笑顔。少し行くと塔頭に徳川家康の遺言により建立された三大東照宮(日光、久能山、金地院)の一つである金地院東照宮がある。茶室や小堀遠州作の庭園が有名である。
 南禅寺をあとにし、平安神宮に向かう途中に、琵琶湖疎水記念館がある。残念ながら休館であったので入館はできなかった。この記念館は琵琶湖疎水についてわかりやすく説明しているので、入館したことがない方は是非とも訪れてほしい。入館も無料、冷房も効いており大変良心的である。
 京都市立動物園の横を通り、昼食場所の岡崎公園へ向かう。動物園も休園であった。(日陰だが、炎天下を歩くのは辛い。)
 岡崎公園に到着。日陰と座るとこを探し昼食。草むらが多いので、蚊と格闘しながらのすばやく昼食を取った。お腹も満足し、汗もやっと引いた。
 午後からは、平安神宮の神苑へ、
 平安神宮は、平安遷都1100年を記念して、明治28年に第50代桓武天皇をご祭神として創建。現在、大極殿は修理中であるが、鮮やかな朱色の応天門が私達を迎えてくれたが、今日は、ちょっと暑苦しい感じ(ごめんなさい。)
 神苑へ、
 神苑は、社殿を取り囲むように東・中・西・南の四つの庭からなっている。池泉回遊式庭園で、明治時代の有名な造園家7代目小川治兵衛らの手になるものである。入るとすぐに南神苑、ここに秋の七草があった。特にハギが多く植えられ、今が満開であった。海老原さんに、苑内の植物について説明してもらったが、人数が多かったので、大川内さん、高橋さんも説明に加わってくれた。(ありがとうございました。)
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 西神苑を通り、中神苑から東神苑にかけて大きな池がある。池の水や水路は、琵琶湖疎水から引き込まれている。だから、琵琶湖で生息している魚や貝が生息している。水路にはシジミ貝を確認することができた。中神苑には、臥龍橋あり、渡ることができる。(渡っている方もいたが、丸い石が並んでいるだけなので落ちないように注意。)東神苑の池には、京都御所から移築された泰平閣(橋殿)が架けられている。皆さん、暑さもピークで橋の腰掛に座ってちょっと長めの水分補給休憩。心地よい風があり、ここから眺めるお庭が素晴らしくいい眺めだった。(ずーと、ここに座っていたい気持ち)
 神苑を出て、あまりにも暑さが厳しいため、ここで一時解散。元気が残っている方は、予定通り辰巳神社まで行く。22名の方が残られた。(皆さん、元気。)
 応天門を出て、白川沿いに歩く。白川の水も琵琶湖疎水から流れている。川沿いにはヤナギが植えられ、石畳で大変風情のあるところだが、日陰がないので、やっぱり暑い。しばらく歩くと、路地を入ったところにひっそりと祠があった。明智光秀の首塚である。おまいりを済まし、終点を目指す。(水分が尽きたので、自販機を見つけ、買いに走った。今日はペットボトル3本を消費した。)
 やっと最終目的地の辰巳神社に着いた。京都御所より辰巳の方向(南東)を守る神社であったが、今では、祇園の芸舞妓さんからの信仰を集め、芸上達のご利益があるらしい。

 今日は、明治維新により都が東京に遷っていまい、寂れた京都をもう一度再生させるための事業の一環であった琵琶湖疎水、平安神宮について改めて勉強することができた。
 暑い中、たくさん参加してくださった会員の皆様、案内の澤田勉さん、海老原さん、ありがとうございました。(文/A.N

9月~11月の行事予定

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雨天決行以外の屋外行事について、前日17時発表の気象庁の天気予報で、
 該当地域の行事当日の午前中の降水確率が60%以上の場合、中止です。
 詳しくは当クラブの概要紹介を参照願います。



公開講座 8月13日(火)「博物館と標本について:何のために?」の報告

 京都市の予想最高気温が38℃という猛暑の8月13日(火)午後2時から「ひと・まち交流館」で公開講座が行われました。講師は高槻市立自然博物館総括学芸員の高田みちよ先生。演題は「博物館と標本について:何のために?」。参加者は一般参加6名を含めて計37名でした。
 冒頭、高槻市立自然博物館(あくあぴあ芥川)の紹介のあと、高槻市鵜殿での特定外来生物ナガエツルノゲイトウの駆除作業を報告されました。駆除には当クラブの有志も参加しています。繁殖力が旺盛で、繁茂すると排水機場のスクリーンに引っかかって目詰まりを起こすなどの被害が出て、兵庫県では1トン300万円で処分との事です。取り残した破片が再び成長して来るのがやっかいですが、駆除後、シートで覆っておくのが有効とのことでした。来年度中の駆除を目指しているとのことです。
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 いよいよ本題です。まず博物館の発祥は古代ギリシャで、神への器物の収集が目的でした。中世ヨーロッパでは様々な珍品を保管する「驚異の部屋」が作られました。世界初の公共博物館は1683年に創設されたオックスフォード大学のアシュモリアン博物館、世界初の国立博物館は大英博物館で、私的収蔵品を一括管理し市民に公開するために創設されました。国際博物館会議(ICOM)は1946年に創設された非政府機関です。141か国から約3万7千人の博物館専門家が参加し、3年ごとに世界大会が開催されます。2019年には京都で開催され、2022年のプラハ大会では博物館の役割に関する新定義案が採択されました。内容は省略します。
 博物館の種類には東京国立博物館のような総合的なもののほか、科学、歴史、美術、動物園、植物園、水族館、天文台などがあります。博物館の仕事は①資料の収集と保管、②調査や研究、③教育と普及(展示)です。自然史博物館は「科学」に属します。
英語の「History」の意味は「歴史」の他に「自然を記録して残すこと」で、「自然誌」が本来の意味であったそうです。具体的には①自然史標本の収集・保管、②生き物の分類、③知り得た知識の公表(教育・普及)、④生物多様性への寄与です。自然史標本の特徴は、人が作ったものではないこと、そして「今」「ある、いる」ものを残すことです。スウェーデンのリンネは生き物をグループに分け、名前に属名と種名をつける二名法を確立しました。また、リンネはこれにより、「神の意思」を知ろうと考えたそうです。現在は、国際命名法規約のもとに世界共通で整理ができ、データベース化されて非常に便利になったとのこと。
 標本の種類には乾燥標本(剥製、押し葉、石ころ、骨格、昆虫、剥製など)や液浸標本などがあります。保存方法は食品と同じで、腐らせない、カビを生えさせない、虫に食われないことです。植物標本は、新聞紙にはさみ、布団乾燥機などで乾燥させるというやり方を現在も続けているとのことです。
 以下は標本の利用例です。標本に名前を付けるには基準となる「タイプ(模式)標本」が必要です。タイプ標本がないのは個性がバラバラの人間だけ。ヤマトグサは日本人(牧野富太郎)が初めて命名したタイプ標本です。標本からはその生き物が生きていた時と場所が分かり、自然環境が失われる前の標本があれば再生は可能です。
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 また、過去の標本があれば分類の見直し(カワムツの細分化の例)が可能で、外来種と在来種の増減の状況(オンブバッタの例)や生き物体内のマイクロプラスチックや農薬の分析をすれば環境の変化が分かります。私が興味を持ったのは、多くの渡り鳥の標本を解剖すると、渡りの途中で器官(胃腸、筋肉)のサイズを変えるという事例です。
これは、各地での標本の比較から分かった事です。また、あくあぴあ芥川では魚類標本から芥川に生息する魚類相がまとまったとのことです。
 標本で重要なのは、いつ、だれが、どこで採集したのかといった採集情報です。これがないと単なるモノです。自然史標本は①過去、現在、未来を繋ぐタイムカプセル、②その生き物の情報が後になっても得られる、③その生き物のいた時間、場所の環境が分かる、④生物多様性を維持するための研究に必要です。
 次は日本の博物館事情について。博物館の父は東京博物館や上野動物園の設立に尽力した田中芳男氏。育ての親は初代東京博物館長で博物館事業の発展と普及に尽力した棚橋源太郎氏。全国には博物館が約5400館ありますが、うち4000館は学芸員が1~3人と小規模。そこで小規模ミュージアムネットワークを2010年に発足させて小規模な博物館同士が連携する仕組みを作りました。高田先生は、
小規模博物館の連携で、博物館全体の底上げに貢献したことで2023年度文化庁長官賞を受賞されました。最後に先生より、博物館資料は人類の財産だが、日本の博物館は予算、人材、収蔵スペースのすべてにおいて不足している。展示を見に行くだけではなくもっと利用して欲しい。国民が「博物館は大事」と思うことが予算増につながる、と締めくくられました。
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 本日の講演で、博物館の歴史、標本の重要性とその利用法、さらに日本の博物館(特に小規模)が抱える問題点を知ることができました。高田先生ありがとうございました。
なお、質問でのヨーロッパの蝉については、英国には1種のみ、ドイツには居ないとの事。以下ご参考までに、世界の蝉は約1600種、日本には約30種、台湾には約50種以上。ヨーロッパでも暖かい、ギリシャからスペインにかけての地中海沿岸には数種類、アメリカには周期ゼミという土の中で過ごす期間が13年と17年の2種類が居て、この時期には大発生するそうです。また報告書作成に当たり木谷博史さんのレポ-トを参考にさせていただきました。(文/讃良)


研修会 7月23日(火)「季節の植物観察」の報告

 今年一番の暑さの週になるという時期の開催になりました。参加者29名、うち実習生6名。講師は大川内さんと高橋さん。私は大川内さんのグループに参加しました。暑い時なのでいつもより30分早い12時に終了しましょうとの提案で、移動はやや急ぎ足になりました。

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 いつものワイルドガーデンは素早く通り抜けて森へ向かいます。風の温度が変わりました。トウサイカチ。フジの豆果に似た実をつけています。低い枝に付いているトゲは生薬になるとのこと。自分の身を守るものが薬になるとの話に納得。その先にコクサギ。コクサギ型葉序で、すっと通り過ぎてしまいがちですが葉の油点や種の実物を見せてもらい、この先の変化を見ていきたいと思いました。また世界三大美芽の一つだという話も聞き、冬にも注目したい植物です。そこから足早に針葉樹林の中へ進みます。お目当てはメガネツユクサ。メガネツユクサって何?青いレンズに薄い水色のメガネ枠のような花。本当にその名の通りでした。そばにはツユクサも咲いていました。
 次は四季彩の丘のパーゴラへ。つる植物で日差しは避けられています。そこでハスの説明を聞きます。「ハスの生長」と「ハスの花の4日間」。そして當麻寺の蓮糸で織られた曼荼羅華の話も聞いて実際のハスを見に行きます。雌しべの先が黄から黒に変わっていく様子などを確かめます。パーゴラに戻ります。カラスウリの花に似たヘビウリの白いレース状の小さな花、長い緑白色の実は本当に蛇がぶら下がっているようです。そこから出ると外にはアオバナ(正式名オオボウシバナ)。友禅染の下書きに使う青花汁を作るための作物です。隣にはハブソウエビスグサ。黄色い花が目につきます。どちらも種子を炒ったものがお茶になります。

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 なからぎの森を抜け、青もみじに囲まれた池のまわりを通り生態園へ。ウワバミソウ(イラクサ科)。ミズと呼ばれる山菜でふきに似た食感で美味しいそうです。カラムシ(イラクサ科)。縄文時代、これから繊維を採って着るものを作っていたそうで、実際に取り出した繊維を見せてもらいました。少しごわっとしています。次はオニグルミ。源氏物語の13帖で光源氏が明石の君に手紙を出しますが、この紙はオニグルミで染められていたとの話。植物から色々な分野に話は広がります。フシグロセンノウヤマガシュウ他。
 次はユリの話。この観察会に参加された方は次の三つの話は覚えて帰りましょうと大川内さんが教えて下さったのは
 ① 明治時代、日本の貿易輸出品の1位は生糸、2位がお茶、3位はユリの球根。
 ② シーボルトによってヨーロッパに紹介された日本のユリは人気が高く、ヤマユリなどから多くのユリが交配された。
 ③ ムカゴができるのはオニユリだけ。

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 カリガネソウを見て、集合場所のノニレの大木の元へ急ぎました。実物の花を見るだけでなく講師の方の話を聞くことで、他の季節の様子やその植物と共にある文化を知ることができました。暑さに負けず参加された皆さんと一緒に楽しい時間を過ごしました。   (文/海老原)