滋賀県草津市立志津南小学校4年生の子どもたちに、身近で豊かな里山の自然を感じ取ってほしいという願いを込めて、学校近くの自然観察道「りょうぶの道」でコロナ禍での中断をはさみ、15年前から毎年、観察会を実施しています。「りょうぶの道」とは、湖南丘陵を切り開いて造成され、1983年から分譲が開始された住宅地である草津市若草と大津市青山にまたがる牟礼山(221m)の稜線に沿って続く自然観察道です。立命館大学のキャンパスとも接しています。
午前9時出発。学校から歩いて15分で「りょうぶの道」の入り口に到着しました。坂道を少し上っていくと、カリンの木があります。事前に準備していたカリンの実の輪切りを見せ、甘い香りをかぎ、カリンのど飴の写真を見せました。木の特徴や固い実がのど飴に使われていることを説明すると、興味深く話を聞いています。
紫色のかわいい実がいっぱいついた木を見つけた子どもがいます。「滋賀県にゆかりの深いNHK大河ドラマの主人公と同じ名前だよ」と言うと、ムラサキシキブとすぐさま答えが返ってきました。赤い実から黒い種がのぞいているゴンズイ。「幹の模様が魚に似ているから、ゴから始まる魚の名前と同じだよ」とクイズを出すと、魚博士の子がサッと手を挙げて「ゴンズイ」と答えてくれました。鋭いとげのサルトリイバラがありました。このとげのあるつるに絡まるとサルも動けなくなってしまうからこんな名前がついたことや、ルリタテハの写真を見せ、幼虫が食草としていることを紹介しました。
牟礼山の山頂付近にたくさん生えているので「りょうぶの道」という名前がついたのですが、子どもたちが歩く前半のコースにはリョウブの木が見られません。ちょっとわき道に入ったところにリョウブの木があります。昔は「救荒植物」として里山に植えられ、新芽を山菜として混ぜご飯にして食べたことを話しました。子どもたちは、すでに葉が落ち、樹皮が剥がれすべすべしている幹だけになった木をなでながら熱心に聞いていました。植物観察だけではなく、地層の観察もしました。下り坂の道の側面が小さな崖になっていて、丸くていろいろな色の小石が土の間にはさまっているところがあります。山の上にこんな丸い小石があるのは、大昔、このあたりが川だったこと。そして、川底にあって角が取れて丸くなった小石が地殻変動で持ち上げられて、今はこんな山の上にあるということを説明しました。何十万年も前の大地の変動の様子をうまく思い浮かべてくれたでしょうか。2時間ほどかけてゆっくりと歩きながら「りょうぶの道」の自然観察を続けていきました。
「りょうぶの道観察会」実施に向けてご尽力いただいた澤田会長や事務局の皆さま、「森の先生」や「サポーター」としてご協力いただいた会員の皆さま、本当にありがとうございました。来年度も、「りょうぶの道観察会」の実施が予定されています。ぜひ、ひとりでも多くの皆さまに子どもたちと関わっていただけることを願っています。 (文/岡本哲生)